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ドイツで見た『Tree Climbing技術を利用した球果採取の仕事』
JIRIこと川尻秀樹

 
 9月にドイツ連邦共和国の南部で森林豊かなバーデン=ヴュルテンベルク州(Land Baden-Wurttemberg、以下BW州)の州政府やロッテンブルク林業大学(Hochschule fur Forstwirschaft Rottenburg、以下HFR)に行きました。そこで、HFRのSebastian Hein教授に林業用母樹林での球果(種子)採取の現場を案内してもらいましたので紹介します。

 概要はヨーロッパモミ(Abies alba)の母樹林があるエッシンゲン(Oshingen)の種子採取現場でTree Climbing技術を利用して大切な遺伝資源を確保する仕事をしていたこと。そして資格認定があること。そして採取された球果(種子)はナゴルド(Nagold)にある「州立種苗センター」に運ばれて管理されることなどです。



    最初に、ヨーロッパモミ(Abies alba)の種子採取現場、エッシンゲン(Oshingen)にある母樹林で、フォレスターのケルンさんから現地説明を受けました。



 Sebastian Hein教授によると、ドイツ全土には28000カ所のヨーロッパモミ母樹林があり、他にも州が定めた母樹林もある。こうした母樹林はドイツの原種で、成長量旺盛な耐病虫害のものが指定され、もしも伐採収穫されれば、その適地を再び選定し指定する。

 ドイツでは150年ほど前までは優良なエリート母樹を定めずに採種していたため、不良な遺伝子を持った苗木が多く流通して問題となった。1930年代に法律により母樹林を定め始め、州立の種苗センターから苗木業者に種子配布していた。

 しかし1990年代に2つの種苗会社が偽物の苗を大量出荷し、その後に倒産した。これを受けて、Z UF制度を立ち上げて苗の品質保証(DNA保証)を実施するようになった。Z UF制度は強制されないが、この認定を受けた苗は15%高く取引される。


【赤はヨーロッパモミ、緑はヨーロッパブナ】

  今回はBW州からBernd Strasser(バナード・シュトラサー)氏の会社に、ヨーロッパモミの球果採取委託をして、雇われたフリーランスのアーボリストが現場作業をしていました。

 ちなみにBernd Strasser氏はISA(International Society of Arboriculture:国際アーボリスト協会)主催の世界大会で8回世界チャンピオンになった方です。



 現場ではフォレスターのケルンさんから、直径60cm以上で樹高30〜35mのエリート母樹林の境界の説明を受け、1本あたり球果重量で100kgほど、1日に4〜10本の母樹に朝7:00〜夜の8:00ごろまで登るそうです。





 ヨーロッパモミは樹上で松ぼっくりが壊れて自然散布してしまうため、9月から球果採取する。

 球果は樹冠上層の受光部のみに球果を付けるため、梢端から1.5mほどに集中しているため、Tree Climbing 技術があり、講習会に参加したアーボリストだけがこの作業にあたるそうです。





 採取した球果は袋に入れて地上に下ろすが、この袋に入れたままでは内部温度が3〜4時間で40℃になってします。万が一、42℃を越えると発芽率は急激に低下するので温度管理がポイント。





 この現場では3〜4日間に球果重量で1〜2tonを採取する。
  収入は2ユーロ70セント/1kgです。 


上の写真でクライミングしている人がわかりますか?

 この球果採取は誰でも請け負えるわけではない。もともと種子採取の専門コース(受講料700ユーロ)を受講し、その後に専用の道具として1000〜1500ユーロを装備する必要がある。




 ロッテンブルク大学ではこの球果採取クライマーの講習会を授業で提供している。このアーボリスト資格にはAとBの2種類があり、ヴォルフ教授が10人ほどを対象に授業で資格取得するが、これには造園業の人たちも参加している。

 Bは校外授業で、チェンソー操作の資格を持ち、何本もの樹木にクライミングし、どこかで球果採取手伝いの実績がある人が、700ユーロ支払って球果採取の講習を受講する。



 ところで「何故、天然更新するモミの球果を採取しているのか?」、それはシカの食害が著しいからです。ヨーロッパモミ、ヨーロッパブナ、ヨーロッパトウヒ(Norway spruce)の順にシカの食害があるほど、シカはヨーロッパモミが大好きです。



 次に、Nagoldにある「州立種苗センター」のトーマス=エービンガー(Thomas Ebinger)技術主査さん。

この施設は1865に「STAATS KLENGE NAGOLD」として設立され、種苗業者に種子販売してきた。

 こうした種苗センターはBW州と、バイエルン州(Freistaat Bayern)にあるKLENGEの2つにあり、他にラインラント=プファルツ州(Land Rheinland-Pfalz)とザールラント州(Saarland)のものはBW州に持ち込まれる。Bayernは州の自生種母樹からの種子のみを対象とするが、BW州は外国産樹種(例えばダグラスファー)も対象としており、広葉樹種子も取り扱っている。



 ところでKLENGEという言葉は、もともと球果を乾燥させる時の「音(KLANG)」を意味し、その複数形としてKLENGEが名称となっている。



 1950年ごろまでは同じ樹種なら産地を特定しない混合種子で配布していたが、現在はBW州とBayernで設立されている「Z UF」という認証制度によって、それぞれ母樹毎にDNA検査され、種子もマイナス40℃で10年間保存され、いつでもDNA照合できるようになっている。


 針葉樹の球果は樹種ごとに乾燥温度が異なり、ヨーロッパモミは25℃以下で乾燥させ、ダグラスファーは40℃で8時間、マツ類やトウヒ類は40〜50℃で8時間乾燥させる。



 当地のヨーロッパモミは3年毎に結実豊凶があり、今年は比較的生り年でヨーロッパモミは20ton、ダグラスファー20ton、他も含めると70tonほどを取り扱う予定。





 広葉樹の中でもナラ類(主にヨーロッパナラ)の堅果は41℃で2時間温水処理すると殺菌できるが、43℃になると堅果の発芽能力が急激に低下する。こうすればマイナス1℃保存で2年経過しても50%の発芽率が得られる。



この広葉樹堅果は学生が1kg当たり1ユーロ50セントで集めているそうです。






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